「ハミルトン式クレジット・システム」の差し迫った必要性について

リンドン・ラルーシュ、Jr.
2010年12月27日

Image of Lyn at energy lab「クレジット・システム」の概念はアメリカ合衆国に特有なものであり、それを大原則として保持し続ける米国憲法は、ロンドン支配下のボストンやウォール街を通して輸入された“経済”や“精神”に異常を起こす「ヨーロッパ特有の病原菌」に対する唯一の処方箋といえます。

アメリカ大陸に先ず登場したのは「松木(パイン・ツリー)シリング」で、ジェームズ2世及びウィリアム3世(オレンジ公)が抑圧を始めるまで、英国王家の特別許可をもとに設立された初期の米国植民地「マサチューセッツ・ベイ・コロニー」にて通貨として適用されていました。この「松木シリング」によるクレジット・システムは、後年ベンジャミン・フランクリン著の「謙虚な提案(Modest Proposal)」の中で述べられている「紙幣」の登場へと引き継がれていきます。このシステムは更に、アレキサンダー・ハミルトン初代財務長官により構想された「国営銀行」の設立により、連邦国家憲法の礎として作用していくのです。

今日、この「クレジット・システム」は、ヨーロッパ及び世界全土に普及している「通貨を基盤とする投機資本システム」に真っ向から対立する最も重要な概念的相違および可能性を提示しているのです。

ハミルトンのデザインを米国憲法の礎として導入するに至る歴史的背景として、先ず各州が直面していた独立戦争後の借金返済にあります。これは統一されること無く、各州独自の方針にて発行されていた債券等を、戦後の困窮において回収することが不可能になったことに端を発しています。この窮地に立たされた若きハミルトンの決断は、特別許可のもとに各州独自で経営されていた銀行システムを、新たに生まれた共和国アメリカの基に纏め上げ、公的クレジットを農業や産業、また公共事業に回し、新国家が背負う借金を「富を生み出す経済」を通して返済する「国営銀行を基盤としたクレジット・システム」を創設することで、「米共和国の座右の銘」とすることだったのです。この国営クレジット・システムを現実化することは、債務を全うすることができる適切な連邦政府を創設することを意味していました。即ち、米国憲法の統一性は、この原則に委ねられており、故に、国家共和制を広く定義することになるのです。

この米国憲法の重要機能として生まれた国営銀行制度は、ウォール街を代表するマーティン・ヴァン・ビューラン及びアンドリュー・ジャクソン前大統領による第二次国営銀行の閉鎖をもって幕を閉じ、ヴァン・ビューランが草案した「ジャクソン改革」は「1837年の恐慌(パニック)」を引き起こすことになるのです。

多彩な機関を通し、ハミルトン式国営銀行制度は歴史に刻まれていき、ジョン・クインシー・アダムズ前大統領や「アメリカン・システム」と呼ばれるようになる政治経済体制を創設するマシュー・ケアリーとその息子ヘンリー・ケアリー、またリンカーンや他の共和主義大統領たちにより導入された「グリーン・バック制度」等は、19世紀後半の米国を世界有数の大国にせしめるのです。

この改革は、セオドア・ルーズベルト、ウッドロー・ウィルソン、カルヴィン・クーリッジ、そしてハバート・フーバー前大統領たちにより一時停止を余儀なくされますが、1933年のグラス・スティーガル法の導入により息を吹き返すことになります。このフランクリン・ルーズベルトの遺産は、妥協案にさらされつつも、ケネディー大統領が暗殺されるまで持ち堪えるのです。ケネディーの死は、ダグラス・マッカーサーが彼に断固拒否するよう訴えた“アジアでの長期戦争という愚考”を現実化せしめ、米国経済はグローバリゼーションの導入により、今日に至るまで破滅の一途を辿っています。英国のジェイコブ・ロスチャイルド爵率いるインター・アルファ・グループは、1971年以来、固定相場制を廃棄することにより米国物理経済崩壊の主要因として未だ名を馳せているのです。

ジョージ・W・ブッシュおよびバラック・オバマ大統領の当選は、この崩壊を決定付けることとなりますが、この方向性は、特に1989年から1990年にかけてフランスのミッテラン大統領、英国のサッチャー首相および米国のブッシュ・Sr.大統領により既に進められており、ドイツおよびソビエト連邦は経済制裁同様の政策に合意することを強要され、今日に至っているのです。

現在、大西洋沿いに蔓延るシステムは、完全倒壊にむけて勢いを増しており、この腐りきった脱ブレットン・ウッズおよび脱ウェスト・ファリア体制には、もう処方する手立てさえ存在しないのです。中国とインド、および他のアジア諸国に関しても、貧困の比率等、物理的経済要素を考慮すれば、その活力をもってしても大西洋沿い経済の崩壊の波から免れることはできないことが分かります。

では、本題中枢へ話を戻すために、グラス・スティーガル法がなぜ必要なのか述べることにします。

2010年度グラス・スティーガル法改定案

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2007年7月、私は当時差し迫っていた投機により巨大な廃棄物となしていた住宅融資バブルに対し、最も適切な処方として「Homeowners and Bank Protection Act of 2007(2007年住宅所有者および銀行を保護するための法案)」を草案し、連鎖反応的崩壊を回避すべく尽力しました。この法案がバーニー・フランク議員等に妨害されず通っていれば、所謂「ベール・アウト(緊急金融救助政策)」には至らなかったのです。このベール・アウト政策は一線をはるかに越え、米国の信用(クレジット)を破滅させただけでなく、大西洋沿い経済、故に世界経済を「超インフレ型バブル」の直接的原因となっており、現在取られている処置を継続する限り止めることができない状況に追い込まれているのです。今や、1933年式グラス・スティーガル法案を即座に適応しない限り、月日を待たずに超インフレが現実のものとなることは、もはや自明の真理となっています。そうなれば、数ヶ月先のことを考える余裕さえ、なくなるということです。

いうなれば、改訂版1933年式グラス・スティーガル法は、大西洋沿い経済の完全倒壊を回避するために残された唯一の選択肢だということです。もちろん、通常の機能を果たす金融規制の管轄化で経営される銀行を、現在超インフレを助長し続けている連邦準備銀行(FRB)および他の銀行機関から引き離すことは、それ自身が経済復興へ繋がるものではありませんが、現状を踏まえるとグラス・スティーガル法は、いかなる経済復興政策を適応するにしても、無くてはならない前提条件として必要不可欠なものとなっているのです。

つまり、この改革が示唆しているのは、1780年代の危機に的確に対処したハミルトン式クレジット・システムの復活、即ち“新たなルネッサンス”なのです。

今必要なのは、フランクリン・ルーズベルト大統領が、チャーチルおよびジョン・メイナード・ケインズの意図に惑わされず採用したブレットン・ウッズ会議での固定相場制の導入を前例とした方針なのです。

今日

現時点にて、グラス・スティーガル法という指標を導入することは、米国および同盟国家 に最も重要な“二つの改革”を現実化させるための手段を提供することになります:

1.グラス・スティーガル改革の意図にそった米国クレジットを再構築すること
これは現存の政権が、所謂“禁欲政策”によりもたらした財政危機から各州や地域を救助するためのもの
2.早急なる高技術を基盤とした最大規模のインフラ事業として、カナダ、メキシコおよびアメリカが先導するNAWAPA計画を適応すること
これは即座に数百万人におよぶ雇用を可能にし、またその高い利潤の比率から資本制度を改めることで他の分野の復興を促すことで、この大事業を賄っていくもの

この種の動機と強い意思は、既にアフリカ、中南米およびユーラシアに顕著となっています。

今日、これが唯一残された選択肢であり、この惑星が新たな暗黒時代を回避できるか否かの境目となっているのです。

全世界の経済、そしてこの惑星を営み得る政治国家体制は、世界人口の“大量削減(虐殺)”をイデオロギーの根底にすえる世界野生基金(World Wildlife Fund)等の狂気じみた風力発電機やソーラー・パネル導入への政治プロパガンダ活動等によって、現在、破滅の一途を辿っています。故に科学を躍進させ得る資本集中型事業への投資を基盤とした物理経済政策を再興させなければ、この惑星に在住する現人口密度さえも維持することができなくなるのです。この事実はすでに継続的に原子力テクノロジーへ投資を進めている国々には理解されており、これらの国々は原子力プログラムを無くしてはこの惑星は維持できないという事実を直視しているのです。「プロメテウス」が象徴する「エネルギー流動密度」向上への献身は、文明が存在し続ける上で欠かせない政策形成および行政の「指標」なのです。

国家主体あるいは関連したクレジット・システムの原則は、我々の文明が生き残るために必要な物理資本密度の向上を目的とした国営および民営クレジットを駆使することであり、また人々の知の探究が唯一の健全な道であるゆえに、人類のモラル、知性、生産性などを維持していくために必要な科学探究を旨とする政策の方向性を見出さねばならないのです。

現時点において、NAWAPA(北米灌漑電力機構)改革は、北米に広がる経済崩壊を妨げ得る手段であるのみならず、この計画が浮上した1960年代以来テクノロジー等の可能性は飛躍し、達成し得る利益の可能性は拡大しています。これはある意味でTVA(テネシー渓谷機構)の遺産を受け継いでいるといえまが、規模とテクノロジーの面でそれを遥かに凌いでいます。この事業は現在全世界を通して可能な科学躍進事業としては最大のものといえるかもしれません。実践面においても、この事業は即座に実行へ移すことができるのです。