リンドン・ラルーシュ氏: 第七年度国際ローデス・フォーラムでの講演

「近日報道されたロシアと中国からのニュースは、全世界を揺るがしている経済危機の最中に鳴り響く、心強い“鼓動”だといえます。病んだ西欧の政治経済体制は崩壊の最終段階に入り、有能な経済学者たちは、数週間の内にも起こり得ると予報していますが、この10月後半の一報は、ユーラシアのみならず、全世界をも救済し得る、頼もしい復興の兆しと見ることができるのです。・・・」

「近日報道されたロシアと中国からのニュースは、全世界を揺るがしている経済危機の最中に鳴り響く、心強い“鼓動”だといえます。病んだ西欧の政治経済体制は崩壊の最終段階に入り、有能な経済学者たちは、数週間の内にも起こり得ると予報していますが、この10月後半の一報は、ユーラシアのみならず、全世界をも救済し得る、頼もしい復興の兆しと見ることができるのです。・・・」

リンドン・ラルーシュ, Jr.
「A Heartbeat is Heard in Asia」より

経済学者リンドン・ラルーシュ氏は、10月8日から12日にかけてエーゲ海ローデス島にて催された「国際ローデス・フォーラム:文明間の対話」にて、アメリカ、ロシア、中国、インドの“四大国協定”の重要性に触れ、ユーラシア間の長期的発展事業を、この度の世界経済危機に対する復興政策の“要”と位置づけました。

上記は、10月13日に報道されたロシアのウラジミール・プーチン首相の中国訪問、および“中国・ロシア両国による長期的経済協定の兆し”に対するラルーシュ氏の見解から引用されたものです。

世界は加速的に変化しており、この“時勢”を正しく理解することが、今日の重要な課題となっています。ラルーシュ氏のローデス・フォーラムでの講演は、この過渡期を乗り切るための“指標”としては類まれなる物あり、故に、ここに翻訳文を掲載します。

Rhodes Forum with LaRouche
ローデス・フォーラム「文明間の対話」: リンドン・ラルーシュ氏(左から二番目の席)


リンドン・ラルーシュ氏:
第七年度国際ローデス・フォーラムでの講演

「文明間の対話」

2009年10月10日

“四大国間の合意による世界経済崩壊の防止と
秩序ある経済再構成の構想図”

リンドン・ラルーシュ:
「時間が限られていますので、今日のトピックを幾つかの要点に絞ることにします。2007年7月25日の国際ウェブ演説の中で、私は経済予報を提示し、アメリカ合衆国経済は崩壊寸前であることを述べました。それは数日の内に現実のものとなりましたが、後に“サブ・プライム”として語られる住宅投資バブル崩壊は、今日に至るまで崩壊の一途を辿る米国経済の単なる“初期症状”だったといえるのです。この経済危機は全世界を脅かすものです。なぜなら、米ドルが急速に降下するということは、中国のような大量のドルを保有する国々が次々連鎖反応的に倒壊することを意味するからです。比較に値する歴史的前例は、14世紀ヨーロッパが経験した全人口の三分の一を死に至らしめる、所謂「暗黒時代の混沌」以外にはないと思われます。これが今日、私たちが直面する現実なのです。

しかし、解決策は未だ存在します。

先ず、私たちがアメリカ全土で推進する法案があります。住宅保有者を守るため、“国家”が破産申請を行い、その具体的過程について州知事および国会議員たちを“教育”しつつ、サブ・プライム等の住宅債務を再構成するのです。

同時に、一般的中小銀行等を保護することが重要となります。アメリカにはグラス・スティーガル法という銀行保護政策が過去に存在し、その役割を担っていました。しかし、ロシアでも悪名高い、オバマ大統領の側近ラリー・サマーズなどは、この保護法を廃止に追い込んだのです。それ以来、米国の一般民営銀行はありとあらゆる投機の波に巻き込まれ、腐敗し、今日の破綻に至っているのです。

更に、1968年から1971年以来蔓延し、1987年から一段と加速していく長期的傾向を見ると、“物質的経済”は、例外なしに崩壊を続けていることが分かります。要するに一般銀行は、もはや投機以外に生き残る術はなく、故に、私の法案は多くの州および議員たちに支持され、この危機を回避するための“礎”となり得たのです。当時の状況下であれば、今日のような混沌を避け、法と秩序をもって財界の再構成を行うことも可能でした。

しかし現状は、国民の家庭を守り、産業や他の重要な雇用機関を保護するどころか、崩壊の一途を邁進し続け、この過程はジョージ・W・ブッシュ、そして現オバマ大統領によって“現状維持”を強いられているのです。

現時点で、時勢の変化と共に好機は去り、もはやこの2007年度の法案では、十分に再構成を促すことができない状況になってしまいました。周囲を見渡せば、この危機は全世界の隅々にまで浸透し、現存する証券やデリバティブ等の債務は、全世界の支払い能力をもはるかに超えてしまっているのです。しかも、国々がそれぞれに八割程度の必要物資を“生産”していた時代とは異なり、今日のグローバリゼーションは、国家が“市場”から国を守ることさえ許さないのです。中国は、米国市場より安く物を生産することを前提に、このシステムに追従してきましたが、近日の連鎖反応的な米国経済の崩壊とドルの下降を受け、中国は“抜け道”を模索せざるおえない状況に立たされているのです。

言い換えれば、この問題には“二つの側面”があるということです。つまり、どのようにこの経済危機に対処すべきかという問いと共に、世界経済との関連性を考察せねばならないという側面です。私が四大国(ロシア、中国、インド、米国)を選ぶ一つの理由は、彼らとその他の国々が協力することで、世界中に蔓延る投機証券やデリバティブ等の“取り消し”を秩序を保ちながら行うためです。誠実な銀行からの融資を最優先すると同時に、国が率先して新たな“債務”を形成し、未来の“物質的生産性”への投資としての“クレジット”を配給、インフラ整備や建築的事業を活性化させていくのです。この独立国家間の合意があれば、今日の危機に対処することも可能となるでしょう。

重要なのは、世界が飽くなき“財界の欲望”に満ちており、故に、産業、農業、インフラストラクチャー等は、世界各国から消えつつあるという事実です。この傾向は、特に米国および西欧に顕著であり、中央ヨーロッパにいたっては、国家安全対策はおろか、経済防衛政策さえも儘ならぬ状況なのです。これはソビエト連邦および東ドイツの消滅を機に導入された“英国式システム”に由来し、時の首脳、仏国のミッテラン前大統領およびジョージ・H・W・ブッシュ前大統領などは、このシステムをドイツおよびヨーロッパの広範囲に強要し、その結果、西欧各国の生産力は失われ、現在、破綻を極めているのです。

現在の最重要課題は、ロシア、アメリカ、中国、インドが共同で、この世界規模の経済再構成を率い、大恐慌を克服したフランクリン・D・ローズベルト大統領が1944年に述べているように、長期投資を基盤とするクレジット・システムを世界の基準とすることなのであり、これが私たちに残された唯一の選択肢なのです。:この方針を貫く以外に、成功はありえません。もし現存するシステムを維持したまま、妥協を重ねることで対処しようとすれば、この星のどこにも経済復興の兆しを見ることはないでしょう。

この経済危機は、単なる不況の波によるものではなく、グローバリゼーションが主な原因になっており、その原則により、世界各国は“他国”に依存することを余儀なくされ、故に、全世界を連鎖反応的に巻き込んでいくのです。その崩壊の日時は予報し兼ねますが、その現実性に、疑いの余地はありません。

今必要なのは、政治的決意です。アメリカの“大統領制”を生かし、それぞれ違った世界観を持つ国々、ロシア、中国、インド等と交渉を重ね、お互いの“徳”を尊重しつつ、共同で事業を達成させるという信念あるいは決意です。これにより、ペロポネソス戦争以来、西欧文明に蔓延ってきた貨幣を崇拝するシステム、“モネタリズム”を撲滅することも可能となるのです。今日世界を牛耳るシステムは、歴史的には“大英帝国”にみられるような帝国主義を可能にするシステムなのです。現在、独自の貨幣を十分に管理できている国はなく、全世界が国際通貨システムに依存するが故に、この貨幣システムを支配する者が、世界を支配するという構図が成り立っているです。

モネタリズムは、“病気”とかわりません。独立国家は、この地位を奪還する必要があるのです。先ず、主要国家が集い、政府間の合意を基に固定相場制を設立し、それぞれ独自の貨幣とクレジット政策を推進していきます。これからのクレジット・システムは、「何が実践的であるか」などの問いにみられる“過去のしがらみ”を拭い去り、長期融資で金利を1.5から2パーセントに抑えた大規模インフラ整備を最優先した、“生産的システム”でなければなりません。中国が、自国の生活水準を好ましいレベルまで向上させるには、これから50年は長期発展事業に従事する必要があり、アジア北部やロシア等、世界の多くの国々が未だに同様か、更に劣悪な経済条件下におかれているというのが現実なのです。

言い換えれば、至極“自然な対話”を行えば、解決法への糸口は見つかるのです。

最後に、オバマ政権について一言述べておきます。現在アメリカでは、著名な学者ローザ・ルクセンバーグが嘗て指摘した、国民の八割を巻き込む“社会現象”が起きています。今年八月から今日までに、民衆の大半が立ち上がり、国会議員に対し、自分たち“国民”が蔑ろにされ続けていることに対し、決起しているのです。「私たちが“国民”なのだ、好き勝手にしてもらっては困る!」と。これは、1989年に東ドイツでもみられた“大衆運動”の兆しなのです。

「我らが国民なのだ!Wir sind das Volk! 」

この現象が、アメリカに浸透しつつあり、国民の八割は、オバマ政権を拒絶することになるでしょう。

オバマ政権は、“総括的変化”を余技なくされており、もし変化を拒否したならば、現状の悪化は確実です。日本は、他の大国と協力するでしょうし、他の可能性も偏在しています。しかし、アメリカが、この世界的変革に追従しない限り、この“共同事業”の成功は望めないのです。もしこの四大国協定を現実化させれば、他の国々は喜んで賛同することでしょう。この協定により、私たちは未来への“指標”を、世界へ提示することになるのです。

ご清聴のほど感謝します。」

Rhodes Forum with Lyndon and Helga LaRouche
ローデス・フォーラムにて、ラルーシュ氏と講演者および参加者たち :
左から二番目の席;ヘルガ・ツェップ・ラルーシュ氏、後列の左端

Lyndon LaRouche Address to the 7th Annual Rhodes Forum

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