夕闇にうごめく英国:「操り人形たち」の葬送行進曲

リンドン・ラルーシュ、Jr.
2010年11月27日

Image of Lyn at energy lab人間は必ずしも「操り人形」ではありませんが、現在のところ我々の著名な政治家や経済学者たちの多くは、常時そのように振舞っているというしかありません。現時点において、英国インター・アルファ・グループによる所謂「アイルランド危機」という現象が、それを鮮明に描写しているといえます。

リンドン・ラルーシュ、Jr.
2010年11月27日

British Bloody Lion人間は必ずしも「操り人形」ではありませんが、現在のところ我々の著名な政治家や経済学者たちの多くは、常時そのように振舞っているというしかありません。現時点において、英国インター・アルファ・グループによる所謂「アイルランド危機」という現象が、それを鮮明に描写しているといえます。

「統計」による経済予報というものは愚かな人々しか信じないものですが、世界にはこの種の無知な「経済学者」たちが蔓延しているのが現状です。しかし、「統計学的予報」と、有効で効果的「経済予報」には根本的かつ組織的違いがあるのです。私自身の継続的な経済予報の成功例からも分かるように、経済危機に陥りつつある国に残された時間や崩壊のタイミング等の要因は「予報可能」であるのに対し、統計予報のメカニズムでは「予期」することさえできないのです。言うなれば、人類を獣から分かつ「徳」とは、「創造主」の意思、つまり人類の意思が自然の摂理を反映し得る潜在性にあり、ここに経済予報の決定的違いが存在するのです。

一般的に、世界の数カ国間あるいは一定の地域に起こる経済危機は、「表面的な違い」を表すことがあります。この時点で唯一定まっているのは、潜在的経済危機が「組織的骨組み」を形成しているということです。しかし、この段階においても選択肢は存在しており、結果がどうでるかは、その選択肢に委ねられていることになります。

では、現在最も差し迫った例を二つ挙げましょう。一つは大西洋沿いの危機、そしてもう一つは世界に広がる危機です。

現在の大西洋沿いの経済は、ケネディー大統領の暗殺以来、着実に悪化し続けています。目的を欠き、ゆえに十年間続くことになる、全く必要性の無かったベトナム戦争は、米国経済を反転させた意味で、言及するに値します。この戦争の結果、英国のハロルド・ウィルソン政権の影響下で、米国は1968年2月から3月にかけての危機に直面し、さらに所謂「’68年世代」による社会体制の崩壊と共にニクソン政権へと傾き、黒幕である英国と共に1971年8月の「崩壊」を迎えるのです。この1971年のニクソン政権による固定相場制の撤廃は、ほぼ同時に英国を基盤とする「インター・アルファ・グループ」システムに取って代わられるのです。

1968年から71年にかけて起こったこの変化は、英・蘭・サウジアラビアによる「オイル・ショック」と呼ばれる「虚構」と共に絶望的な崩壊を引き起こすカーター政権を可能にし、故に、私は、「1929年の株式市場崩壊」にも似た経済危機を予報するに至るのです。当時の連邦準備制度理事会(FRB)の議長を勤めていたアラン・グリーンスパンはこの危機に対し、現在のハイパー・インフレーションを可能にした投機経済体制を、当時の保護政策の後任として導入するのです。グリーンスパンの長期にわたる破壊的行為と同時期、つまり1989年から90年にかけて、英国のマーガレット・サッチャー首相、フランスのミッテラン大統領、そして米国のジョージ・H.W.ブッシュ大統領は、現在見るも無残なユーロ・システムを推し進めるのですが、これら世界規模の変革は、マーストリヒト条約に見られるように、英国を含む現在のヨーロッパ崩壊の礎となっているのです。

現在進行中の世界資本制度の倒壊を鋭く見極めるには、先ず、フランクリン・ルーズベルト前大統領の死から現在に至るまでの過程を踏まえ、世界の潜在的大国および米国の意思と明察力を理解する必要があります。すなわち、現在の選択肢はそれらの国々の「政府の意思」に委ねられているということなのです。

この「人」にのみ見られる「意思の質」は獣のそれとは一線を画すものであり、予測可能ではあったが、あたかも不可避であるように思われた現在の経済危機さえも、「自由意志」により新たな選択肢を生み出すことができたのです。最も頻繁に起こる文明の危機の主要因は、政治権力が、存亡の危機を生み出した政策および政治形態を直視せず、それらを廃棄することを怠るところにあるといえるでしょう。

英国システムは、長期に及ぶ大英帝国の影響下、「通貨を富とする資本システム」として世界全土へと普及し、ウィリアム三世(オレンジ公)の登場とアン女王の死去以来、直接的あるいは間接的経緯により経済危機の主要因となっており、1492年から1648年にかけての継続的に虐殺を繰り返す半永久的戦争状態を引き起こし、ヨーロッパ全土をも超越することになります。この東インド会社を典型とする「戦国時代」を可能にした基盤として最も注目すべき点は、今日「リベラリズム」と呼ばれる、真理を否定し、「欲望の追求と苦痛の回避」を二大原則としたヴェニスのパウロ・サルピを創始者とする社会体制およびイデオロギーであるといえます。

現在大西洋沿いおよび、アジア近郊やアフリカ等に普及し悪化し続ける経済危機の問題点は、ここにあるといわざるを得ません。もちろん、アジア諸国には貧困を極める地域が存在します。しかし、現在中国やインドが直面する危機の主要因は、2007年8月後より進行している大西洋沿い経済体制の崩壊に端を発しているのです。

然るに、現世界経済危機の源は、大西洋沿いシステムにあるといっても過言ではないのです。言い換えれば、現システムの加速的崩壊の原因は、1971年より固定相場制に取って代わったインター・アルファ・グループを基盤とする「大英帝国システム」にあるということです。このシステムが破綻を極めている現在、全世界に蔓延るこの経済体制は、断末魔の叫びをあげながら崩壊を続けているということです。この破綻しきった資本制度の虚構を世界経済および貿易から排斥することが、現在最優先されるべき選択肢なのです。

ふたを開けてみれば、英国経済自身もまた、腐りかけた死骸同然のインター・アルファ・グループおよびウォール街を排斥し、指針を急転換しなければ生き残れない状態にまで追い込まれています。つまり、世界規模でグラス・スティーガル法ならびに緊急固定相場制を設立しないことには、この惑星全土を覆うであろう新たな「暗黒時代」が少なくとも数世代は続くという事実は避けられないのです。

近日英国は、ローマ皇帝ネロを思わせるナルシスト、オバマ大統領を操り、グラス・スティーガル法を断固として拒否し続けることで、米国を自滅に追い込む政策を推し進めています。しかし、皮肉なことに、この法を受け入れないことは、英国自身の崩壊に繋がることをも意味するのです。つまり、「英国首脳」の意見は、往々にして英国自身のためにはならないのです。

英国はどう動くか?

英国は、インター・アルファ・グループから離脱し、保護主義および世界的固定相場制を適応することで、未だに選択肢を得ることが可能だといえます。つまり、今が「初心へ戻る時」だということです。

この時点で、英国経済の存亡は、多少の苦痛は避けられずとも、健全な「調整」を行うことが鍵となります。つまり、固定相場制下にて最も基本的な方針の転換として、インフラ整備を基盤とする「経済プラットフォーム」を適応することです。これはアメリカ大陸に関し、現在私が提案する「NAWAPA」大規模インフラ計画にみられるように、大陸全土を包括的にまとめ、原子力や熱核反応原子力テクノロジー、更に超高速鉄道ならびに超伝導マグレブ列車を促進し、産業と農業の分野を拡大するものです。マグレブは現時点で貨物を輸送するのには最も効果的なテクノロジーであり、山脈や高地が連なる地域を通過することになる「NAWAPA」事業にとっても、欠かせない技術なのです。

この「NAWAPA」計画によって、北米地方の降雨量を増加させ、更にロシア、米国、カナダ等の北極圏に連なる国々が科学などの分野での協力を進めることで、農業分野の生産性を拡大し、現存の世界人口が人道的に許容できる生活水準を保持するのに必要な「気候の変化」を復活させねばなりません。

もし英国が上記にうかがえる指標に向けて行動するには、最も受け入れられた現存の「インフラストラクチャー」の概念を放棄し、その真の意味を再発見する必要があります。即ち、英国は、その伝統である地政学的「海上貿易主体の帝国主義」の概念を、「北極圏の過ち」として葬り去る必要があるということです。つまり、物理的資本投資を進め、かの有名な「プロメテウス」が示唆する「エネルギー流動性密度」を向上させることで、人類はその未来を、太陽系のみならず、宇宙放射線に満ちた銀河系の探求の中に見つけなければならないのです。

これらを人類の目標あるいは決意としなければ、今日、幾つかの独創的アジア諸国を除く世界各国の経験からも分かるように、全惑星は次の数世代にとって耐え難いものとなるでしょう。残念ながら、母なる地球が現在我々にって生を営み得る唯一の惑星であり、他の選択肢を期待するには、まだ日が浅いといわねばなりません。